2009年06月07日
恐怖と不安の六時間 その2
ツーマン乗務で幾分緊張がすくなくなった。しかし車内は無言で張り詰めた雰囲気だった。
ときおりカチャ、カチャと刃物の音が無気味に聞こえた。
この状態を少しでも変えようと山川さんと会話を交わした。突然男が云った。
「石巻まで云ってください」
石巻といえば仙台からさらに北上する。すかさず山川さんが相当な金額になるので内金お願いしますと云った。
大泉IC近くになった。コンビニに寄りたいとのことでそこで止め、ここまでの料金、約一万円を支払ったので少し安心した。高速に入り東北道を進む。途中PAで運転交代を言うと、そのまま走れという。そして刃物のカチャ、カチャガ聞こえた。しかし郡山を過ぎたあたりで車両点検を
理由に強引に安達太良PAにはいった。その後、宮城県に入り管生SAで交代、料金は九万円ほどになつた。車は北上し仙台南から三陸道に入る。ここから五十Kほどで石巻だ。この東北地方はかって旅回りの仕事でよく走っていたので地理には詳しい。
やがて「石巻IC」「石巻港IC」の標識がみえた。
「どちらのICでおりますか」
返事がない。しばらくして
「港に行ってください」
石巻港ICを出ると東埠頭、中央埠頭の看板が目にはいった。
「港のどこへ」
しかし返事がない。そのうち郊外へ行け、マンガ館だ、食堂だとかわる。いよいよ最悪のケースかと心臓が高ぶる。知らない町をぐるぐる走る.
と、そば屋があつた。
「お客さん、そば屋ですよ」
「ここで降ります」
男はビニール袋からしわしわの封筒を出し料金128130円を払い、降りたのです。あっけない幕切れでした。
午後4時を少し過ぎたころでした。
石巻まんが館