十円玉の女

takachan

2013年01月17日 10:51

皆様こんにちは、
今日はしとしと雨が降っていた夕暮れでした。
立川北口からタクシーに乗ったのは細身のどこかツンツンと
し冷たい感じの若い女性のお客様でした。

  「高松町まで」

ヒステリックな声でいいました。あいにく夕暮れ時で道が混雑
していたのです。

  「急いでくんない!」  
                
        「はい分かりました」

 と云ったところで前の車が進まない限り動けません。
やっとこさ大きな交差点を過ぎてバス通りから細い路地に入る
よう指示されたのです。

  「ここでいいわ、まったく!」

料金は1メーターの710円でした。女は10円玉をセンターボックス
の上に10枚づつ重ね7つの山に整えたのです。
その時でした細い路地なので対向車のクラクションが鳴ったのです。
そこで私は出来るだけ左に車を寄せようと縁石にタイヤを乗せたとたん
無残にも十円玉の山がジャラジャラと崩れ落ちてしまいました。
対向車は難なくすれ違っていってしまいました。

  「何よ!これ!」

      「すみませんね、急いで拾いますから・・・」

座席の下やマットの上にも散らばってしまったのです。ひたすら
一生懸命かき集めたのですが再び女が

  「急いでるんだからさー、早くしてよ!」

    「すみませんね、あとは私が探しますので、どうぞお降りくだざい」   

  「まったくもうー」
             
 捨てぜりふを残して降りていきました。
丁度、夕食の時間も近いし車庫へ回送してゆっくりと10円玉探しをしに行った
のです。車庫でやってたらあと30円が見つかりません。
そこで後部の客席シートをはずしてみたのです。
そこに見えたのは宝の山のように1円玉から始まって10円玉や100円、500円玉までなど7枚のお金でした。
その周りにはなぜか避妊具までありました。
きっとこの車の正規乗務員は客席シートをはずすことが少なかったようです。

結局、現金1048円のお金が出てきたのです。


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