2009年05月27日
恐怖と不安の六時間 (その1)
連休最後の日でした。立川駅から乗ってきたのはボサボサ頭に不精ヒゲの若い男の人でした。持っているものは小さなコンビニ袋とペットボトルだけ。
「センダイに行ってください」
「えっ、センダイって東北の仙台ですか」
なんとはなしに雰囲気から不安を感じたので近くにいた同僚に相談した。彼が男の様子をうかがうと
「ちょつと変だよねー。本社に無線いれたら」
すると本社からすぐに無線で指示が入った。遠距離なので料金の確認と二人乗務でとのこと。お客に了解をとり乗務員を迎えに車庫へと向かった。
「女性の運転手はいませんか」
この言葉に妙な不安を感じたのです。車庫近くの公園の前で
「止めてください。ヒゲをそりますから」
そういって袋からカミソリとカッターナイフを取り出し降りていったのです。この刃物をみて気味が悪くなりました。まもなく戻った顔を見ると口のまわりに血がにじんでいるのです。なにか異様です。車庫に着くと操車主任が駆け寄ってきたので
「なにか変です。お客を見て下さい」
主任はドァーを開けて客席をのぞき
「相当長距離なので料金のご用意ありますか」
「あります」
低い声で言った。車庫待機の運転手が心配そうにみていて
「金、大丈夫かなー」 「おかしいよ覚せい剤でも・・・」
主任が
「万が一なにかあったら警察に飛び込んで下さい。充分きおつけて〃」
この判断で山川乗務員とのツーマンで不安を抱きながらも仙台へ向けてスタートしたのです。
以下次号