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Posted by たまりば運営事務局  at 

2009年01月16日

眠れる美女(その2)

 「お客さん、起きてくださいよー」

必死で声をかけましたがダメでした。心配していた呼吸はしているのです。困った私はどう対処したらよいのか迷っていた時、空車のタクシーが通りかかったので止めて運転手さんに聞いたのです。
  
  「すみません、このへんに交番ありませんか」
    「どおしたの、お客さん金持ってないの」
  「そぉじゃないんです、女性が起きないんです」
    「それだったらね、この先左側に交番あるから・・。大変だね。」
 
 お礼を云い教えてもらった交番に行き、おまわりさんに起こしてもらったのです。彼女は驚きの様子で目を丸くしておりました。このような場合、私たち運転手は女性の体に手を触れることは禁じられているからです。正気になった彼女にこの先の道を聞きますと
     「まっすぐ」
云われたとおりに走りました。
  「お客様、私この付近の道まったく分からないので寝ないでくださいね」
やがてT字路に来たので
   「どっちに行きますか」
      「まっすぐ」
   「冗談よしてくださいよ。右ですか左ですか」
      「じゃー左」
何か変です。さっきの運転手さんの料金不払いのことが頭に浮かんでまいります。そして「まっすぐ」の言葉で20分ほど走ったのです。
   「お客さん、いったいどこに行かれるのですか」
       「下高井戸」
   「さっきの交番が下高井戸の駅の側ですよ。戻りますか」
GPSのコンパスを頼りに再びさっきの駅まで、なんとかたどり着いたのです。
   「着きましたよ、下高井戸の駅ですからね」
すると、今度は
       「松原3丁目に行って下さい」
いよいよ怪しげな雰囲気になってきましたので
   「お客さん、もうこれ以上走っても料金だけがあがります。さっきから3000円も上 がってますよ。とりあえず精算して下   さい。でないと走れません」
少しきつい口調で行ったのです。彼女は、どこか淋しそうな目で私を見つめたのです。
そして暫くして、しぶしぶ財布を取り出し12000円を支払ったのです。
   「これからどうします。タクシー乗り換えるなら探しますけど」
        「ここで降ります」
彼女が降りたあと、何気なく電柱の住所表示を見たのです。

そこには 「松原3−5」 


                     (おわり) 

 
                       
                        
                                                                
                       

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  • Posted by takachan  at 05:58Comments(12)